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帰ってきた繰言別館2022

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Bitter Sweet Treats【全年齢BL】

Posted by 浅沼諒空(園長NULL) on   0  0

表題「Bitter Sweet Treats(びたー すうぃーと とりーつ)」※略してBST


荒筋:
多分ちょびっと田舎?のとある高校に通う二人の男子、菊池くんのことが好きな瀬野くんと瀬野くんのことが好きな菊池くんのお話。爆発すればいいのにね!

********************‘********************

対応:声劇・映像用
比率:男2(役柄の性別変更厳禁)
上演時間:約40分
可…一人称や語尾など読み辛いと感じた箇所の読み替え、内容の大筋に抵触しない程度の軽いアドリブ
不可…内容改変に近い過度なアドリブ

執筆……2022年3月

タイトル引用…ビタースウィート・サンバ(内容には一切関係無し


【登場人物】
①瀬野アキラ
高校生。成績はそこそこ良い。特に部活には入っていない。一人称は僕or俺。

②菊池セイイチ
瀬野の同級生。中学校入学からずっとクラスも同じ。成績は中の上。運動系の部活に所属。一人称は俺。




―――開幕―――


教室。自分の席で物思いに耽る瀬野。



瀬野「(M)僕には意中の人がいる。数年モノの片想い。」



菊池登場。教室へと入る。

瀬野「おはよー、菊池。」

菊池「おっす。」



菊池、瀬野の後ろの席に着席。



菊池「瀬野、お前今日なんか元気無えな。」

瀬野「そう?菊池こそ今日はテンション低い気がするけど?」

菊池「ん?あー……そうかもな。ちっと寝不足っぽいかもしんねえ。」

瀬野「真面目にオベンキョーしてたの?」

菊池「……そんな風に見えるか?」

瀬野「全っっっ然、見えない。」

菊池「なら聞くなよ。」

瀬野「(M)男同士の朝の会話はローテンションのまま盛り上がらず、僕は手持ち無沙汰な心持ちで周囲に視線を移す。一部とはいえ男女ともにどことなく浮かれているというか、空気が何となく華やぐというか……絶賛片思い中の身とはいえ、こういうイベントデーってのは嫌いじゃない。」

瀬野「(M)そして2月14日が近づくと、我が想い人に生じるささやかな変化。」

菊池「早く帰りてえなあ。」

瀬野「……そうだね。」

瀬野「(M)ほのかに漂うチョコレートの香りと、おでこ辺りにぽこっと現れるニキビ。この二つの現象を結びつける要因がたった一つだけあって、僕はその真相を何年も図りかねてきた。」

瀬野「(M)ニキビが出来るくらい、全身にフレーバーを纏うくらいに女子達からチョコもらっているのか?人は見かけによらない……いやひょっとしたら自分で作って意中の相手にあげてるのかも知れない。最近は男から女の子にあげたりもするって姉ちゃんが言ってたような、あれ外国だと元々逆なんだっけ?」

瀬野「(M)朝から妄想が止まらない。もしかして僕にはストーカーの素質があるのか?いやさすがに自宅周辺を徘徊して情報収集に務めるほど気合い入ってる訳じゃないけれど……つまりはずっと、片想いの青少年にありがちな粘着質の妄想に溺れ続けているのだ。」



上の空の瀬野。呼びかけている菊池。



菊池「おい、瀬野」

瀬野「……。」

菊池「おーい、こら、瀬野ってば!おい。」

瀬野:……んんっ? な、何?

菊池「何じゃねえよ。さっきから呼んでんのに答えねえから。」

瀬野「ああ、ごめん、ちょっとボーッとしてて。」

菊池「……もしもガチで体調わりぃなら、無理しないで早退した方がいいんじゃねえか?」

瀬野「そうだね……ありがと。それじゃ適当なとこでサボっちゃおうかな。」

菊池「サボりかよ……。」

瀬野「ねえ、菊池。」

菊池「あん?」

瀬野「またニキビ出来てるよ。おでこに。でっかいの。」

菊池「んー?……ああ……(触ってみる)いてっ!」

瀬野「ばか、触っちゃダメだろ。」

菊池「ああ……触った感じじゃ結構デカそうだな……瀬野から見ても目立つか?このニキビ。」

瀬野「ああ、割りと自己主張してるよそのニキビ。早めに薬塗っといたら?」

菊池「ええ~……マジか……」

瀬野「……菊池ってさ。毎年このくらいの時期になると増えるよね、ニキビ。何か理由でもあるんじゃないの?」

瀬野「(M)僕には意中の人がいる。云年モノの片想い。」

菊池「そうか?……この季節だし空気が乾燥してるからじゃねーか。この辺からっ風がつえーし。」

瀬野「それだけが原因じゃない気もするけどね。ちゃんとケアしときなよ。」

瀬野「(M)2月14日が近づくと、我が想い人に生じるささやかな変化。ほのかに残るチョコの香りとおでこのニキビ。」

菊池「薬は買ってあるから後でやるわ。……あー、意識すると痛ぇ気がするな。」

瀬野「一人でちゃんと塗れる?」

菊池「アホか。」

瀬野「(M)僕はずっとこいつが……菊池の事が、好きだ。叶わない恋だと知りながら。」



数日後、3月頭。夕方。橋の上の歩道を歩く瀬野。



瀬野「(M)もうすぐホワイトデーがやってくる。そして僕はオレンジ色に染まる家路を急ぐ。橋の上から一望できる田舎町の輪郭が葡萄色へと変わり、夜の顔になっていく。結局、先月は家族以外貰える相手も特にはおらず。せめて自分へのご褒美をがっつり買い求めることにしたのだった。」

瀬野「(M)ちなみに中身は何かというと……近所の書店にはほぼほぼ置いておらず、購入の現場を近所の人々に見られたら身の破滅。自宅に直接配達されても高確率で一発レッドカード。しかしわざわざ他県まで出向いていくのはめんどくさい……つまりはそういうブツである。購入手段の詳細は……流石に明かせない。だってまだ未成年だし」

瀬野「(M)こうして二次元で満足出来るうちはまだいいか……と言いながら、買っちゃう内容とか、絵柄とか?そういう傾向が偏ってるのは……これ完全に未練なんだよなぁ……と。はぁ~あ。みじめ。」

瀬野「でも、人通りも少ないとは言っても、いつまでも封筒むき出しのままじゃまずいな。万が一見られでもしたらアウトだし、鞄にしまっとこ……わあーっ!?」

瀬野「(M)僕はいくつかの判断を間違えた。そう封筒って意外と滑る。そして学生鞄の中身を律儀に教科書でいっぱいにしたらそりゃしまいづらくなるよね?」

瀬野「(M)最後に僕はしまおうとするタイミングを盛大に間違えた。お宝はみるみるうちに僕の手を滑り落ち、橋の下へと落下していった。」

瀬野「うっ……そっっだろぉぉぉぉぉ~~~~!?……ヤバい。これはヤバい!誰も来ないうちに回収しないと……!」



その後。同じ場所。



菊池「……何やってんだ?あいつ。」

菊池「(M)いわゆる部活動からの帰り道。夕方と夜がシフト交代しつつある河川敷の草むらで、もぞもぞと動く怪しい影あり。その正体は我が親友、瀬野であった。」

菊池「おーい。瀬野ー。」

瀬野「へっ?菊池!?」

菊池「んだよ。その反応は。何してんだ?」

瀬野「な、何でもないー!荷物落としちゃったから探してるだけー!」

菊池「(M)その割りには必死な様子に見える。……他の奴ならともかく、こいつの困ってるところはあまり見たくねえんだ。俺は。」

菊池「一緒に探してやるよ。今そっちに行く!」

瀬野「えっ!?」

菊池「(M)瀬野のそばまで行く。なんともいえない微妙な表情だ。どんな感情が込められてんだ。わからん。」

瀬野「……なんで来るんだよぉ……(小声)」

菊池「何落としたんだ?特徴教えろよ、すぐ見つけてやるから。」

瀬野「……。」

菊池「(M)何故そんな面白い表情で黙り込む。言わなかったら分からねーじゃね-か。分からなかったら探せねーじゃねーか。探せなかったら帰れねーじゃねーか。暗い夜道を一人で帰らせるのは嫌だし、早く言えっつの。」

瀬野「……封筒。A4サイズくらいの、結構分厚めかも。」

菊池「よし、分かった。二人で探せばすぐだろ。」

瀬野「―――あのさっ!」

菊池「ん?」

瀬野「見つけても中身は絶対に見ないで欲しいんだ。見つけたらすぐに僕に言って。」

菊池「……分かった。」

瀬野「絶対だよ?」



瀬野と菊池、街灯が頼りなく照らす夜の草むらを捜索する。



菊池「封筒……封筒……多分あいつの宛名が書いてあるだろうから、見れば分かるか……街灯が無かったら完全に手元が見えなくなってたろうな……あんだけ必死って事はエロ本とかDVDとかか……うんっ?」



がさりと音がして、菊池の指先に何かが当たる感触。



菊池「瀬野ーっ、よくわかんねーけどそれっぽいのあったぞー。」

瀬野「あーっ!!それ!!!!」

菊池「声でけーよ!!こっそり探してたんじゃねーのかよ。」

瀬野「ご、ごめん……。」

菊池「(M)封筒……瀬野の探し物は恐らくこれだろう。中身はやはり本か雑誌か、パンパンに詰め込まれていてちょっとしたきっかけではち切れそうだ。何はともあれ、見つかってよかったよかった……おおっ?」



菊池が拾い上げた瞬間に封筒の底が破け、どさどさどさっ、っと中身が草の上に落ちる。



菊池「おわーっ!?」

瀬野「ちょっと菊池、今の声と音なに!?」

菊池「わりい!封筒の底が抜けた!!中身全部出ちまった!」

瀬野「えーっ!!!」

菊池「さっきより声デケえな!ちょっと待ってろ、全部拾うから。草の上だから汚れてねーと思うし……。」

瀬野「へっ!?ちょ……ま……やめ……さわら……。」

菊池「(M)魔が差した。一言で表すならそういう事なんだろう。あいつを一つ知る事が出来るかな、なんて。そんな事を考えてしまった。ちらっと見るだけだ。ちらっとだけ。ちらっとだけ……。」

瀬野「菊池……?」

菊池「(M)―――街灯の冷たい光がぼんやりと浮かび上がらせたそれは。」

菊池「……へっ?何……これ。」

菊池「(M)男同士が裸になって、扇情的な表情のまま絡み合ってる絵だった。」

菊池「(M)ヤバいと思いながらページをめくる。表紙より更にきわどいシーンが描写されている。され続けてる。されまくってる。ページをめくる指が止まらない。そしてそのうち、これらには一つの共通点、法則に気が付いた。いや、まさか。そんな。でも。」

瀬野「菊池、何してるの?」

菊池「……えっ?」

瀬野「……。」

菊池「あ……ああ……。」

瀬野「……もしかして、中身、見たの?」

菊池「……ごめん、見ちまった。」

菊池「(M)上から振り下ろされた声。振り返り見上げると、瀬野がそこにいた。」

菊池「(M)俺は、云年もの間、密かに恋焦がれてきた男の心のひだを、無断で押し開いて、覗き見ちまった。俺がやったのは、そういう事だ。」

菊池「(M)手に抱えていたものを機械的に手渡す。瀬野はそれをひったくると、猛ダッシュでその場から走り去っていった。俺は感情の処理が追いつかないまま、血が出そうなくらい唇を噛み締めて、宵闇に溶けていく背中を見送るだけだった。」



数日後、瀬野宅。布団の中でさなぎのように丸まっている瀬野。



瀬野「……家から出たくない……しんどい……胃が痛い……あううう……。」

瀬野「(M)記念すべき僕のゲイバレDAYから数日経過。あれからずっと引きこもっていた。ずっと隠してきた内面を他人に晒してしまった動揺、更に大勢の人間に知られてしまうかも知れない懸念、そして……ずっと好きだった奴に嫌われてしまったかも知れない、恐怖。」

瀬野「(深呼吸にも似た溜め息)……でも……このままじゃ……。」

瀬野「(M)このままじゃいられない。このままでいても仕方無い。クソガキな自分にもそれくらいは理解できていた。どうせ全部ダメになるなら最後にちゃんと菊池と話がしたい。頭からずっぽり布団を被り続けながら、ずっとあいつの事ばかり考えていたんだから。」

瀬野「……会いたい。」
瀬野「(M)そうだ。会うんだ。これは逆に、自分の気持ちを直接伝えられるチャンスなのだ。例え色々な意味で当たって砕け散ると分かっていても。」



学校。菊池より先に登校していた瀬野、自分の席に着席しつっぷす。



瀬野「……。」

菊池「……よお。

瀬野「……!」

菊池「……た、体調、崩してたのか。もう登校しても平気なのか。」

瀬野「……。」

菊池「む、無理はすんなよ?」



菊池、着席する。



瀬野「(M)まさか向こうから挨拶してくれるなんて、しかも普段どおりに。お、怒ってたり気持ち悪がってはいないんだろうか、いやでも、でもなんかこうThis is よそよそCな感じは伝わる。うん。そりゃそうだよね。」

菊池「(独り言)一限目は……草間の現国か。寝てられっから助かるな……。」

瀬野「(深呼吸して)……菊池!

菊池:!?

瀬野「あ……。」

菊池「……な、なんか、用か?」

瀬野「……今日、時間あるかな。菊池とちゃんと話がしたいんだ。」

菊池「……話?俺、と?ちゃんと……?」

瀬野「ちゃんと。こないだの事とか、ちゃんと、話しておかなくちゃいけないと思って。だから時間が欲しいんだ。……ダメか?」

菊池:……今からなら。

瀬野「えっ?今!?」

菊池「屋上なら授業の間は誰も来ねえだろうし、草間は授業サボっててもあまりうるさく言わねーし。都合いいだろ。」

瀬野「……分かった。」



屋上。瀬野と菊池、何十分も無言のまま。



瀬野「……。」

菊池「……。」



やがて意を決したような空気が漂い、その直後。



瀬野「菊池、ほんとにごめん!(同時)」

菊池「瀬野、すまなかった!(同時)」

瀬野「……えっ?」

菊池「……へっ?」

瀬野「……なんで菊池が謝るの?」

菊池「……俺がお前に酷い事しちまったからに決まってんじゃん。そっちこそなんで謝るんだよ。」

瀬野「……そうだね、じゃあ、ちゃんと話す。少しだけ付き合って。」

菊池「わかった。ちゃんと聞く。全部聞く。」

瀬野「ありがとう。……こないだ僕が河川敷の草むらに落とした荷物をさ、菊池が一緒に探してくれようとしたじゃん。……あの中身、読んだよね?」

菊池「あ、ああ、うん。」

瀬野「……どうだった?」

菊池「どうって……んん……男同士が……なんかやらしい事……してた。」

瀬野「何かほかに気づいたこと、ある?」

菊池「……えーっと……。」

瀬野「あるよね?その反応。正直に言ってくれていいから。」

菊池「……違ってたらすまん、自意識過剰かもしれねーんだけど……出てたモデルとか、漫画のキャラとか……なんか少し、俺に似てた……気がする。」

瀬野「……正解。」

菊池「……それってつまり、どういう事なんだ……?」

瀬野「僕、菊池の事が好きなんだ。」

菊池「……!嘘……だろ?」

瀬野「嘘じゃない。ずっとそういう目で見てた。近くに来られたり話をしてるだけでいつもドキドキしてた。クラスの女子と話をしてるのを見てるだけで胸が痛くなった。」

菊池「……。」

瀬野「だからアレを菊池に見られて、僕が菊池の事をそういう目で見てるってのを知られて、みっともないなって……申し訳ないなって……。」

菊池「……俺が他の奴等に言いふらすかもって?」

瀬野「それはない!……でも、他の人達に知られたらって考えただけで死にたくなるけど。それも罰だって思ってる。」

菊池「じゃあ、俺もちゃんと言うから信じてくれるか。」

瀬野「……?わ、わかった。」

菊池「……俺、瀬野の事が好きだった。ずっと。」

瀬野「……へっ?」

菊池「いくらなんでも告白されてその反応は無くねーか……?」

瀬野「え、いや、だって……嘘でしょ?」

菊池「嘘じゃねえ。あの日はお前が困ってるとこを見たくなくて、一緒に探そうなんて言ったんだ。お前の事を知りたくて、盗み見るなんて真似をしちまった。矛盾してるって分かってるけど。気持ちも手も止まらなかった。本当に悪かったって思ってる。」

瀬野「……!」

菊池「あと、俺が2月になるといっつもニキビ作ってくるのを気にしてたけど、その理由も話すわ。わ。

瀬野「……うん」

菊池「……ずっと自分ちで作ってたんだ、チョコレート。お前に渡すのを妄想しながら。」

瀬野「……。」

菊池「俺が女子に生れてたらちゃんと渡せたのに、美味しいって言ってもらえるだろうに、好きだって気持ちを伝えられたのにって。そう思いながら毎年作って。こんなごっつい手でラッピングまでして、毎年無理矢理自分で食ってた。毎年バレンタインデーが来るのが辛かった。お前を好きだって事と、そんなの言えやしねえって事の両方を、一年で一番思い知る日だから。……これが、俺の秘密だ。」

瀬野「ほ、ほえ~……。」

菊池「……顔赤いぞ。」

瀬野「そ、そっちだって耳真っ赤だよ!」

菊池「耳が赤いかなんてそんなん自分で分かるか!」

瀬野「……。」

菊池「……。」



二人、どちらともなくその場にしゃがみこむ。心なしかさっきまでより距離は近い。



菊池「こういうの、取り越し苦労って言うんだっけか?

瀬野「さあ……?でもなんか、ほっとし過ぎたのと頭が混乱してて、なんか気が抜けた。

菊池「俺もだ。」

瀬野「……ずっと菊池の気持ちに気付けなくて、ごめんね。」

菊池「……。」

瀬野「勇気出せなくて、ごめん。」

菊池「……それはお互い様だろ。」

瀬野「そっか。」



瀬野は少し俯いて、時折菊池の方へ視線を移す。菊池は静かな表情で遠くの景色をじっと眺めている。



菊池「なんか……不思議な気分だ。」

瀬野「何が?」

菊池「お前のことを好きになってから、こんな日が来るなんて思ってもみなかった。」

瀬野「(M)菊池の今の心境や言いたい事は、なんとなく分かった。狭いコミュニティ内の情報拡散の速さとそれにより生じるであろう窮屈さ、生きにくさ。そんなのまだ子供の僕らにだって想像くらいできる。でなければこんなにうろたえたり鬱屈したりはしないで済んだろう。」

瀬野「僕も、こんな日が来るなんて思ってもみなかった。こういう僕をリアルな場所で、僕として、嘘をつかずに誰かにさらけ出す日が来たのかー、って。きっかけは不運な事故みたいなもんだったけど。」

菊池「お、おお……そうだな……。」

瀬野「……あ、でもこれ別に性癖カムアウトしたかったとかゲイ友が欲しかったとかじゃないからね?僕本当にずっと菊池の事……。」

菊池「わぁってるよ。」



菊池、瀬野の肩を抱いて強引に話を止める。



瀬野「あっ……。」

菊池「俺は、ちゃんとお前を信じてる。」

瀬野「……。」

菊池「お前も俺を疑ってねえだろ。」

瀬野「うん。」

菊池「……。」

瀬野「……。」

菊池「……また顔赤くなってんぞ。」

瀬野「菊池は耳が赤い。」

菊池「……るせぇ。」



それから更に数日後、3月末。日曜日の昼下がり。瀬野は片手に、菊池は両手に買い物袋をぶら下げて町中を歩いている。



瀬野「結構大荷物になったねー。

菊池「ああ。ウチちょうど米切らしてたし。」

瀬野「……重そう。」

菊池「これもう車出すレベルの量じゃねーかなあ……早めに免許取っちまうか……。」

瀬野「ねえ菊池。」

菊池「なんだ?」

瀬野「両手ふさがってて大変そう。僕一つしか荷物持ってない。」

菊池「別にいいだろ。俺んちの買出しも一緒に済ませてんだし、お前に持たせるのは気が引ける」

瀬野「せめてそっちの重い方と交換した方がよくない?

菊池「別にいい、慣れてるし。」

瀬野「……ふぅ~ん……。」

菊池「なんだよ。」

瀬野「デュクシ(空いた方の手で菊池のわき腹をつっつく)」

菊池「おきゃぁっ!?」

瀬野「すげー、聞いた事無い声出たじゃん。」

菊池「てめー!何すんだよ!」

瀬野「えっ?両手ふさがってるから。つい。」

菊池「ついじゃねーよ……!」

瀬野「デュクシ(空いた方の手で再び菊池のわき腹をつっつく)」

菊池「(絶叫)」

瀬野「(M)期末テストを終えた日曜日。今日は菊池の家で一緒にチョコチップクッキーを作る事になった。ちょっと遅めのホワイトデーというか、まあそもそもバレンタイン自体成立してないんだけど。」

瀬野「(M)わがままを言って、菊池には迷惑をかけちゃったかな……と思ったりもしたけれど、菊池は妙に張り切っていた。買い物中に材料を吟味する目がめっちゃ鋭かったし、いつもは無口なほうなのに一つ質問したら十は返してくる勢いだし。菊池もこの日を楽しみにしてくれてる……のだとしたら。うん、やっぱりちょっと、嬉しい。」

瀬野「……ふさがってなくても、町中じゃ手は握れないよね。」

菊池「何か言ったか?」

瀬野「何も。」



二人、菊池宅に到着。



菊池「家族全員夕方まで出かけてっから、変に遠慮とか警戒とかしなくていいぞ。」

瀬野「うん。それじゃ、おじゃましまーす……菊池のうち、菊池の匂いがする。」

菊池「そりゃそうだろ。」



菊池、先に台所に向かう。



瀬野「(M)菊池の家。初めて来るのに、自然と気持ちが落ち着く匂い。そうか今日は友達としてじゃなく、その……す、好き合ってる同士として来ている訳でつまりその、あれ、落ち着くんじゃなかったのか、どうした僕。」

菊池「(台所から)どうしたー?スリッパどれ使ってもいいから早く来ーい。」

瀬野「わ、分かった!」



菊池宅の台所にて。手際よく材料と道具を用意する菊池。



菊池「このエプロン使え。」

瀬野「ありがと……僕は何手伝えばいい?」

菊池「手伝ってもらうほど難しくもねーけど……んじゃ今回はこのチョコレートを細かく刻んでくれ。適当でいい。終わったらこっちのボウルに入れといて。」

瀬野「分かった。わざわざお菓子作り用にバターを新しく買うの?」

菊池「料理用のをそのまま使ってもいいんだけどな。塩分入りだから仕上がりが少し変わるんだよ。だから菓子作りの時は無塩バターを使うケースが多い。」

瀬野「なるほど~。」



順調に調理を続けていく二人。



菊池「ボウルにバターを入れて滑らかになるまで混ぜて。」
瀬野「おう。」

菊池「いいぞ、そんな感じ。次は砂糖を加えて白っぽくなるまで混ぜてー、卵黄を加えて混ぜて、バニラエッセンスを加えて更に混ぜる。」

瀬野「う、うん。混ぜる……と。」

菊池「さっき俺がふるった薄力粉を加えて、粉気がなくなるまで混ぜる。」

瀬野「こ、こなけ……。」

菊池「そしたら瀬野に刻んでもらったチョコレートを加えてさらに混ぜる。」

瀬野「ま、混ぜるのにも順番があるの!?」

菊池「そらそうよ。菓子作りは化学だって、姉貴が言ってた。」

瀬野「うーん、シンプルなようで奥が深い……。」

菊池「評論家みてーな言い方だな。」



菊池は生地をラップにのせて、棒状に伸ばして形を整えている。瀬野はその様子を興味深く見ながら、使い終わった器具を洗っている。



菊池「そういやさ。なんで、チョコチップクッキーだったんだ。」

瀬野「そりゃ……その。バレンタイン、貰い損ねちゃったし。」

菊池「あー……だから、チョコ、か。」

瀬野「なんで全部食べちゃうんだよ。」

菊池「……受け取ってもらえる可能性があるなんて思ってなかったんだよ、しょうがねーだろ。」

瀬野「……もっと早く勇気を出していたらな。」

瀬野「(M)両思いになれたと安堵したのも束の間。今度はこれまでの時間を無駄にしてしまっていた事を悔やむ気持ちが募るようになった。「もっと早く勇気を出していたら」そう思うと無性に心がざわめく。だって来年もこいつと一緒にいられるかどうかなんて、好きでいてもらえてるかなんて、そばにいる事が許されてるのかなんて。」

瀬野「……誰にも分からないんだしさ。」

菊池「……そんな事考えてたのか。」

瀬野「考えちゃうよ。当たり前だろ。」

菊池「暗いな、お前。」

瀬野「真面目なんだよ。」

菊池「何が真面目だよ。あんな、え、エッチぃ本がっつり買ってるくせによぉ!未成年のくせにもう大人気分かよ!」

瀬野「い、今それ関係無い!」

菊池「今そんな後ろ向きな事いちいち考えなきゃダメかよ。気にしてどうすんだよ。

瀬野「でもそうじゃん。事実じゃん。僕らは……どこまでいっても男子女子の、普通のカップルとは話が違うんだし。」

菊池「ああっ、もう!」

瀬野「へっ?」

瀬野「(M)数瞬の後、気づけば僕は菊池の腕の中にいた。僕よりも少しがっちりした両腕と胸板が、ぎゅっと包み込んでくる。」

瀬野「あ……。」

菊池「あのなあ……云年ものの片思いなめんなよ。どんだけ熟成されてると思ってんだ。」

瀬野「……片思いじゃ、なかったじゃん。」

菊池「俺にとってはずっとそうだったんだっつの。」

瀬野「……お互い様じゃん。」

菊池「……ん、そうだったな。」

瀬野「(M)少しだけ上を向くと、超至近距離にある菊池の顔。おでこのニキビはもう治っていた。」

菊池「別にさ。来年も一緒にいられるかどうかわからねーのは、別に俺たちに限った話じゃねーじゃん。恋愛なんて。」

瀬野「……。」

菊池「普通の、男と女のカップルだってさ、どんなに真剣に恋愛してても別れる時は別れるだろ。お互いに大切に想っててもさ。」

瀬野「それは……そうだね。」

菊池「だからさ。それまでの時間をどう過ごしてこうかとか、そうならないためにどんな努力をしてこうかとか、そういう話を、俺はしてえよ、お前と。」

瀬野「……!」

菊池「せっかく両思いになれたばっかりでさ。嬉しい気持ち絶頂の中で、終わっちまう事を真っ先に考えるの、寂しいじゃんかよ。」

瀬野「うん。僕も寂しい。好きでいてくれて、好きでいさせてくれて、嬉しい。」



……。……。……。



数時間後。菊池宅の玄関にて。



菊池「もうちょっと持ってけよ。初めて自分で焼いたんだしよ。」

瀬野「ありがと。結構多いんだね。

菊池「あのレシピだと40枚くらい焼きあがる計算だな。」

瀬野「へー。」

菊池「」
瀬野「今日はすごく楽しかった。また一緒に作りたい。一人じゃまだ全然無理だしね。

菊池「お、おう……また、来いよな。

瀬野「うん。今度は菊池もうちに遊びに来てよ。」

菊池「……あん時見たエロ本とかいっぱいあんだろうな、お前の部屋。」

瀬野「(盛大に吹き出す)」

菊池「おわっ!きたねっ!!」

瀬野「な、なな、なに言ってんのお前!バカ!」

菊池「何でキレてんだよ……」

瀬野「……じゃあ、次僕が来る時に、あの本菊池の部屋にごっそり置いとくよ」

菊池「(やはり盛大に吹き出す)」

瀬野「わーっ!きたなっ!!」

菊池「自分に似た顔の男が男と絡んでるエロ本とか脂っこ過ぎるんだよ……!」

瀬野「そっちが先に話振ったんじゃん!それに僕の好みにケチつけるなよ!どんな顔好きになったって僕の勝手だろ!」

菊池「そ、そういう話じゃねえ!あとあんなの家族に見られたらアウトだからマジやめてくれ……お前んちはそういうの大丈夫なのかよ……?」

瀬野「……いや、多分ボコられる。」

菊池「ならもっと警戒しろよな……。」

瀬野「気をつける……。」



菊池宅を後にする瀬野。



瀬野:(M)わちゃわちゃした会話を打ち切り、ふわふわした足取りで、僕は菊池の家を出た。ガードレール沿いにぽてぽてと歩く道路からは、照り返しで煽られたアスファルトの臭い。春の気配をたっぷり含んだ空気。きっと夏も程無くして訪れるだろう。何分くらい歩いただろうか?気づけば僕は、ロードレールから落ちそうなくらいに身を乗り出して、思わず叫んでいた。
瀬野「(深い深呼吸)あーーーーーー!!!好きだーーーーーー!!!!」

瀬野「(M)吐き出した後もいっそう激しく響き渡る鼓動に蹴飛ばされるように、僕は自宅の方向へと駆け出した。見覚えのある制服を着た女子高生とすれ違う。くすくす笑ってる、もしかしたらさっきの聞かれてたかな。ううっ、だとしたらちょっと恥ずかしい。知り合いじゃないといいけど。土のついたキャベツを山のように積んだトラックから挨拶の声が飛んできた、多分二軒隣の窪田さんかな。ちゃんと挨拶を返した気がするけどうろ覚えだ。びゅんびゅん顔に当たる風が冷たくて心地いいけど、全身は熱くて何がなんだか分からない。」



同じ頃、菊池宅。自分の部屋から窓の外を眺めていた菊池。



菊池「……声でけぇんだよ……バカヤロー。」

菊池:(M)不意打ちだあんなの。仕返しのつもりか?いや誰にも聞かれてないって思っててやったか。別に名前言ってないしな。繊細なようで大胆っつーか、臆病なようで無謀っつーか。危なっかしい。

菊池「俺だって……さあ……。」

菊池「(M)俺いまどんな顔してる?くっちゃくちゃに蕩けてないか?めちゃくちゃ熱いからそうなっててもおかしくないかも。多分今人生で一番ニヤケてる。家族に見せらんねーぞこれ。」

菊池「……次は何しよっかな。あいつと。」



瀬野「(M)未来の事なんて神様しか分からないとしても。」

菊池「(M)俺たちの恋心が神様の誤算だったとしても。」

瀬野「(M)今を生きているのだと、そう覚悟させてくれる相手から受け取るときめきを。」

菊池「(M)世界に向かって一緒に喧嘩を売れるような、そんな相手を見つけられた昂ぶりを。」

瀬野「(M)そんな小さな苦さと甘さに満ちた日々を少しでも長く紡ぎ続けていけるようにと。」

菊池「(M)願って、誓って。噛み締めて。明日へと。」



Bitter,
Sweet,
Treats.



―――終幕。



【作者より蛇足】
※最後までご覧頂きありがとうございました。何かありましたらご指摘ください。
※我が国におけるLGBTQへの認識も日進月歩で変化している事と思います。2022年3月までの見解とざっくり捉えて頂けたら幸いです。
※ラストの「Bitter,Sweet,Treats.」は読んでも読まなくてもOKです。
※菊池くんは、2月に某所に投稿した一人読み台本「翠花の哀句」の語りと同一人物、という設定です(取り敢えず)
※興が乗ったら適当なタイミングでキスしてもいいです。舌は入れない方がいいと思います笑
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浅沼諒空(園長NULL)

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